Sony

English

越境し、行動する研究所

【越境し、行動する研究所】


 現在、人類が直面する問題は、地球環境、貧困、高齢化や医療・健康など極めて複雑かつ多様でダイナミックな現象を相手にしなければならない問題ばかりです。これらの問題の解決には、領域を超えたアプローチや全く新しい発想が必要となるでしょう。我々は、当研究所の設立20周年の機会に、従来の閉鎖系を対象としたアプローチから、開放系を対象としたサイエンスのアプローチとして「オープンシステムサイエンス」を提唱しました。オープンシステムは、本質的にシステムの状態や構成に関して不完全な情報しか得ることができず、挙動の予想が困難です。そして、このようなシステムの性質に起因する問題を解決しようとするなら、広範な領域の知識を統合すると同時に、研究室にとどまる事無く、自らの手で実体を理解し、現実的な解決策を模索する必要があります。

 我々、ソニーコンピュータサイエンス研究所は、「人類の未来のため」の研究を志しています。基礎研究はやるが、応用は人任せという態度では、実際のその研究が世の中にインパクトを与えるかの保証はありません。また、オープンシステムが対象の研究では、自らがシステムの変革に関与し続けながら研究を行う必要すら有るのではないかと思います。研究室で、学術的な側面の強い研究のみに満足すること無く、実際に行動し、現場へ飛び込み、世の中を変えて行くことが必要だと思っています。

 我々が掲げる「越境し、行動する研究所」というモットーは、新しい研究領域を切り開く、新たな概念を提案し展開する、大きなイノベーションを引き起こし、それを新たな産業へと展開する、ビジネスを興すなど、いろいろな局面で我々の考え方を導く指針です。単なる真理探究のための研究ではなく、広範かつ深い洞察に基づく基礎研究を「人類の未来のため」になる具体的な成果・事業へと一気に展開することが我々に課せられた使命であり、目指している研究所の姿です。
 これは、決して容易な事ではありません。未来を展望する視線、世の中への貢献という視座、現実とのギャップを見据える眼力と、それを埋めて行く行動力が問われます。そしてその実現には、大きな困難が伴うでしょう。しかし、この様な軋轢の中から、真の独創的研究とその人類への貢献の道筋が見えてくるのではないかと思います。

 研究をするという事は、未来を切り開くという事であり、そのことに対する期待や願いが込められています。我々は、これらの期待や希望に応える為に、越境し、行動し続けて行こうと思います。

北野 宏明、株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所 取締役所長

(June 25, 2010)