種同定チュートリアル

 

昆虫種同定チュートリアル


発見版

①まずは虫を見ることに慣れる。植物や野原を、ざっと見てみる。風ではない動きがある部分、違和感がある部分(緑の葉や壁などに、なにかくっついてる、とか)、物音や鳴き声に注目すると、虫の存在を発見しやすい。まずは、ぼーっとして眺めていると、そのうちにだんだんと生きものの存在に眼が慣れてくる。

②発見した虫を、とにかくよく観察する。今度はざっと見るのではなく、細部に注目して見てみる。翅の色、脚の形、行動、etc…。そうした細部に見慣れることで、同定もしやすくなる。

③さらに慣れてくると、特定の種類の昆虫が好む植物や好みの環境がわかってくる。すると、ここにはあれがいるはずだ、という推測ができるようになって、発見しやすい。


同定版

①その場で同定できないことがほとんどだと思うので、写真に撮ってみる。その際、近くにいる虫や、止まっている植物などを一緒に撮っておく。アブラムシなどは、餌になっている植物がわからないと、同定はほとんど不可能だが、わかれば、かなり種類を絞り込める。

②同定に当たって、まずは目レベルでだいたいのあたりをつけられるようにする。チョウ(orガ)なのか、コウチュウなのか、バッタなのか、なんとなく目星をつける。習うより慣れろ。

③サムネイルがずらっと並んでいるWEB昆虫図鑑で、該当する目のあたりを、ざーっと見ていく。似ているものをピックして、細部を比較し、一致するものを探す。どこに注目したらいいかは、各昆虫によって違う。WEBには同定ポイントが書いてあったりするので、それを参考に。

迷ったときは、「オンブバッタ ショウリョウバッタ 違い」みたいにググると、丁寧な誰かが答えを用意してくれていることが多い。

WEBの情報は、ほとんどの場合、素人が発信しているので、1つの情報だけに頼ると誤同定の危険がある。本来は自分で図鑑を引いて典拠を参照すべきだが、時間がない場合はせめて、比較的信頼度の高いWEB図鑑を幾つか比較して、情報の確度を上げるべき。

④和名が複数ある場合や、学名などを正確に記入する必要がある場合、基本的に「新訂原色昆虫大圖鑑(全3巻)」/「写真・日本クモ類大図鑑」に依拠することにしている。


書籍

・「新訂原色昆虫大圖鑑(全3巻)」

前述の通り。基本文献。

・「写真・日本クモ類大図鑑」

前述の通り。クモについての最も基本的な文献。

・「日本農業害虫大事典」

作物別に関係する害虫がまとめてある事典。とても使いやすい。


書籍については、この3点が基本。その他個別の図鑑も電子化してあるので、必要に応じて利用。でもWEB図鑑で、だいたい事足りるので、そちらから使えばいい。



WEB図鑑(僕が同定によく使うもの)

・Google

基本。あたりをつけて、まずはググってみる。

・昆虫エクスプローラ

http://www.insects.jp/

さまざまな検索法を備えた昆虫サイトの老舗。掲載種数は多くないので、僕はあまり利用していないが、代表種に絞り込まれていて、むしろ初心者には使いやすいかもしれない。「むし探検広場」というコミュニティでは質問も受け付けていて、ここを見ていると、虫好きがどうやって昆虫を同定しているか、どんなところを面白いと思って虫を見ているか、よくわかると思う。

・虫ナビ

http://mushinavi.com/

2,600種を超える掲載種数を誇る図鑑サイト。目別にサムネイルで写真が閲覧できるので、該当種を探しやすい。ここをざーっと見て行くと、大抵同定の糸口が見つかる。重い&初心者には細かすぎる、のが、難点だが、僕は一番頻繁に使っている。

・進化する昆虫図鑑

http://chigaku.ed.gifu-u.ac.jp/chigakuhp/html/kyo/seibutsu/doubutsu/500KonchuTop/index.html

岐阜大学が作成している、Citezen Science型の昆虫図鑑。掲載種数が豊富。ページも軽くて見やすい。しかし、同定の難しい種がちゃんと同定できていないことが多く、わかりやすい種に掲載が偏っている気がする。欲しい情報が得られないことも、わりと多い。参考程度、という印象。

・デジタル昆虫図鑑

http://www.saturn.dti.ne.jp/~dinsects/

軽い。写真が大きくて見やすい。掲載種数はそこまで多くはないが、手軽に利用できる。

・とうおう写真館・あおもり昆虫記

http://www.toonippo.co.jp/photo_studio/insects/index.html

掲載種数がとても多い(4000種を超える)。インターフェースは使いにくい。勝手に和名をつけているものもあるらしく、また間違いも散見されるので、このページだけ見て、同定できた気になるのは危険。

・福光村昆虫記

http://members.jcom.home.ne.jp/fukumitu_mura/_index.html

同定のポイントが書いてあることが多く、勉強になる。ページが重く、写真が大きいので、一覧で見にくい。

・幼虫図鑑

http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/youtyuu/index.html

ページ右側にある「縮小画像で検索」が、めちゃくちゃ使える。変なイモムシ・毛虫系を見つけたら、迷わずこの図鑑を使う。

・みんなで作る日本産蛾類図鑑V2

http://www.jpmoth.org/index.html

他の図鑑でガの名前であたりをつけて、Googleで検索すると、このWEB図鑑がたいてい一番上にくる。このWEB図鑑自体はインターフェースが使いにくいが、情報の確度は高いので、同定の確認に使うとよい。