大平 徹

「時間とは何か、空間とは何か」という問題は絶えざる魅力をもち、この問題 を考察する多くの探求がなされてきました。 私も大きくはこのテーマに興味をもっております。 特に「非局所性」や「ノイズ」が、この時間と空間を考察する問題のなかでどのよう な役割を持っているのかということを 主題としています。具体的なテーマとしては時間的な非局所性の一つの現れである信 号伝達や相互作用の「遅れ」や将来の「予測」などが、ノイズの存在するような状況 でどのような影響を持つのだろうかという問題や、時間的なノイズや揺らぎを考えら れるような方向はありえるのだろうかという 問題などの考察をしています。物理、数学、生物、経済や社会にあるさまざまな現象 を、このような問題意識からもアプローチ していけないだろうかと考えております。

主な著作

「ノイズと遅れの数理」(大平徹著、共立出版、2006年1月).

「時間軸上の非局所性とゆらぎ」大平徹、日本物理学会誌 vol. 60, 260 (2007/4).

"Stochasticity and Non-locality of Time", T. Ohira, Physica A, (in press, 2007).

"Resonance with Noise and Delay", T. Ohira and Y. Sato, Physical Review Letters, vol. 82, 2811 (1999).

"Delayed Stochastic Systems", T. Ohira and T. Yamane, Physical Review E, vol. 61, 1247 (2000).


Research Activities

Stochasticity and Non-locality of Time (List of Papers)

ここでは、私が非局所性と揺らぎを時間軸上でとりあつかう時の概念的な枠組みを議論しています。時間的な非局所性の例としては 遅れ力学と関連するトピックを研究してきましたが、新たに予測力学を提案考察しています。また、時間を確率変数として 考える方向として、「確率的時間」を持つような力学モデルを提案しています。

Delayed Stochastic Control (List of Papers)

ここでは、遅れ確率制御(delayed stochastic control)の仮説の提案をしています。人間の反応時間は数100ミリのオーダーです。しかし、たとえば倒立棒の制御などそれよりも速い動きをする、状況や物体の制御をすることも見られます。通常はこれらはフィードバックと予測制御をくみあわせたものであると考えられますが、はたしてそれだけでしょうか? たとえば、このように「遅い」反応時間をもちながらも、一輪車にのれるようなロボットを伝統的な制御手法の組み合わせだけでつくれるでしょうか? ここでの解析では斥力をもつ遅れランダムウォークの結果からちょうどよい揺らぎと遅れの組み合わせがより安定した状況をもたらす可能性が示唆されています。このような「共鳴」の活用が生体制御にも存在するのではないかというのがここでの仮説です。また、ここではあらたに、人が指先の上で棒のバランスをとるときに反対の手で物体を振ったり、足を揺らしたりするとより安定感が得られることができるという現象を見つけました。これは上記の遅れ確率制御の一つのサポートになるとともに医療や運動機能のリハビリなどへの応用を探る可能性をもっています。

Delayed Stochastic Systems (List of Papers)

遅れとノイズをともに含むシステムの記述をする数理的なプラットフォームとして遅れランダムウォークを提案してその性質を調べています。遅れランダムウォークはその遷移確率がある一定時間前のウォーカーの位置によってきまるようなランダムウォークです。このモデルの特徴は遅れがある一定の値を超えると、自己相関関数の振動現象がみられるなどが出現するところにあります。ある程度解析的にこのような現象を追うことや、そこからの知見を時系列からの遅れの推定や人間の重心制御のモデルとして扱うなどの考察を進めています。

Applications of Delay and Noise (List of Papers)

遅れやノイズのもたらす現象の解析を応用できないかという試みの提案をいくつか行っています。ここではその例として以下のような方向を考察しています。(1)暗号や符号システムへの応用。(2)遅確率共鳴の現象を示すモデル。(3)高頻度為替データの確率構造。(4)ネットワークの構造の出現を行うモデル。

Stochastic Neurodyanamics (List of Papers)

マスター方程式を用いて、確率的な神経回路網のモデルの解析を行いました。解析手法としては第二量子化の手法や、経路積分などをもちいて、数値計算との結果の比較を行っています。

Emergent Autonomous Computational Systems (List of Papers)

生体のシステムなどでは多くの要素の単純な相互作用が、システム全体としての意外な現象や機能を表します。ここではそのような例に学んで、機能と結びつくような多体相互作用システムの提案を試みています。具体的には以下のような例をあげています。(1)神経回路にみられるような興奮性と抑制性の制御をもちいた自律分散的な交通流制御のモデル。(2)免疫系にあるような抗原認識のシステムのるいすいからパターン認識をするようなモデル。(3)多くの計算機を物理の場のように捉え、その間の相互作用を、基本粒子「コンピュトン」の交換により行う方向を示唆したモデル。

Profile and Other publications

In English