PRESS RELEASE

ソニーコンピュータサイエンス研究所
折り紙構造に着想を得た小型手術支援ロボットで
動物モデルでの網膜下投与に成功
~ 眼科手術への応用が期待される高操作性・高運用性を実証 ~
株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所(代表取締役社長:北野宏明 以下、ソニーCSL)は、株式会社VC Cell Therapy(代表取締役:高橋 政代)との共同研究により、折り紙構造に着想を得た小型手術支援ロボット「Origanoid」を開発しました。
さらに、本ロボットを用いて動物モデルでの網膜下投与を実施し、高い成功率で網膜下への液体投与を確認しました。目の精密な手術に求められる高い操作性と、実際の医療現場で必要となる安全性・運用性を両立できるロボット技術の可能性を示す成果となりました。
なお、本研究成果はソニーCSLの鈴木 裕之研究員らによるもので、学術誌「Nature」を展開するNature Portfolioの国際科学誌「npj Robotics」に掲載されました。

©VCCT Inc. / Sony CSL
折り紙構造に着想を得た小型手術支援ロボット「Origanoid」(左)と、動物モデルにおける網膜下投与の様子(右)。
微細な針先(Needle)操作により、網膜下への液体投与の成功を示すブレブ(Bleb:液体注入により形成された膨らみ)が確認されました。
<研究の内容>
折り紙構造に着想を得た小型手術支援ロボット「Origanoid」は、160 × 50 × 50 mm、17.9 gと小型・軽量でありながら、12 µmの位置精度と最大550 mNの出力を実現し、網膜下投与に求められる精密な操作を可能にする性能を備えています。この出力は多くの網膜硝子体手術で求められる操作力に対応可能な値です。
本ロボットは、滅菌可能なアーム部と再利用可能な駆動部を分離し、磁気カップリングによって接続する構造を採用しています。これにより、高い操作性と手術現場での運用性を両立しています。また、停電時や術者が緊急と判断した時に手術器具を約50ミリ秒以内に安全な位置へ自動退避させる機構を備えています。さらに、アーム部はプラスチック材料を用いた製造コスト低減の可能性を有する構造のため、再滅菌を必要としない単回使用(ディスポーザブル)機器への展開可能性も示されました。
今回行った性能評価では、眼球モデルを用いた検証により、器具の装着、挿入、操作、抜去といった一連の手術動作が安定して実施できることを確認しました。
さらに、ウサギを用いた動物モデルにおいて網膜下投与を実施した結果、6眼中5眼で網膜下への液体投与が確認され、実際の手術環境に近い条件においても、本ロボットが微細な操作を支援できることが示唆されました。
<研究の背景と経緯>
眼科手術や脳神経外科などでは、非常に微細な操作を伴う手術が求められます。しかし、人間の手には生理的な震え(手ぶれ)があるため、非常に細かい手術を人の手だけで行うことは困難です。そのため、このような微細な操作を安定して行うための手術支援ロボットの開発が進められてきました。
中でも網膜下投与は、厚さが約200~300マイクロメートルと非常に薄く繊細な網膜の下に薬剤や細胞を届ける高度な手術手技であり、手術には数十マイクロメートル単位で器具を制御する高い精度が求められます。
これまでの手術支援ロボットは高精度な操作を実現する一方で、多くが金属製の複雑な構造を持ち、大型化・重量化する傾向があり、手術室の限られたスペースや狭い術野への導入が課題でした。また、滅菌対応や安全機構など臨床上の要件を満たす必要があり、構造の簡素化や小型化には限界がありました。
これらの課題に対して、折り紙構造に着想を得たロボットは、小型・軽量で組み立てやすい構造を実現できる有望なアプローチとして注目されています。
<今後の展開>
本研究により、折り紙構造に着想を得た小型ロボットが、精密な手術に求められる操作性と安全性に加え、現場での運用性を備える可能性が示されました。
網膜下投与は、iPS細胞由来製品を用いた細胞治療や遺伝子治療などにおいて重要な手技であり、本技術は、こうした治療の安定的な実施や安全性向上への貢献が期待されます。
また、小型で簡素な構造のロボットは、臨床現場への導入や運用の負担を軽減し、精密な手術を支援する技術の普及につながる可能性があります。
一方で、臨床応用に向けてはさらなる検証が必要です。今後は信頼性や耐久性の評価、より多様な手術条件での検証を進めることで、臨床応用に向けた研究開発をさらに発展させていきます。
<論文>
Title : Origami-inspired manipulator enables in vivo subretinal injection
Journal : npj Robotics
Authors :Hiroyuki Suzuki1, Yuki Nakano2,3, Yuki Koyama4, Tadao Maeda3 & Masayo Takahashi3
1Sony Computer Science Laboratories Inc., Tokyo, Japan
2Department of Ophthalmology, Kagawa University Faculty of Medicine, Kagawa, Japan
3VC Cell Therapy, Inc., Kobe, Japan
4Department of Mechanical Engineering, The University of Tokyo, Tokyo, Japan
DOI : https://doi.org/10.1038/s44182-026-00096-x
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株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所
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