Former Project from Social Implementation
Flow Machines
※このプロジェクトは研究開発を終了し、2026年3月にその成果をローランド株式会社へ移管しました。
お知らせ:ソニーコンピュータサイエンス研究所「Flow Machines」の研究成果をローランドへ移管
Flow Machinesとは
Flow Machinesは、音楽においてクリエイターの創造性を拡張することを目指す、研究開発及び社会実装プロジェクトです。
これまでの音楽の歴史においても、それぞれの時代における発明や技術開発によってクリエイターの持つ創造性が拡張され、新しい音楽のステージへ到達して来ました。古くは、様々な楽器の発明に始まり、近代に入ってからも、シンセサイザーの発明や、ドラムマシンなどにより、新しい音楽が生まれています。
Flow Machinesは、こうした技術と創作の関係を背景に、機械学習や信号処理といった技術を用いて、クリエイターの発想を支援する新しい音楽制作の可能性を探るプロジェクトです。本プロジェクトにおいて、AIは楽曲を自動的に生成する存在ではありません。音楽を解析し、その構造やスタイルをもとにクリエイターへ新たな視点や選択肢を提示し、発想やインスピレーションを促すための道具として設計されています。最終的な判断や表現の主体は人にあり、AIは創作プロセスを補助する役割を担います。
このプロジェクトは、2012年にソニー CSL – パリがパリ第6大学と共同で始めた音楽研究が土台となっており、その後も研究開発と楽曲制作への適用の双方を通じて、音楽制作における新しい創作プロセスの検証を続けてきました。
Flow Machinesにおける技術的アプローチ
Flow Machinesでは、音楽制作の工程の中でも特に「作曲」に着目し、メロディ、コード、ベースといった要素を対象に、制作の過程で活用可能な形での提案を行っています。AIによって生成される結果は完成形ではなく、あくまで素材や着想の起点として提示され、そこから人の判断によって楽曲制作が進められます。
楽曲制作の流れ
Flow Machinesを用いた楽曲制作では、まずクリエイターがコード進行やスタイルを設定し、スタイルパレットを選択します。その上でAIが複数の候補を生成し、メロディやコード、ベースといった要素が提示されます。これらの候補は、制作の出発点として何度でも生成・更新することができ、比較や組み合わせを通じて検討されます。
生成された音楽要素は、MIDIデータとして扱うことができるため、後から自由に編集や調整を行うことが可能です。クリエイターは、AIから提示されたアイデアを取捨選択し、自身の意図や感性に基づいて楽曲を構成していきます。必要に応じて、AIを用いない部分を自ら作り上げることも前提とされています。
このようにFlow Machinesでは、AIが作曲を代替するのではなく、人の創造性とAIの提案を組み合わせることで、新しいコライティングの形を探求してきました。人とAIがそれぞれの役割を担いながら協調する制作プロセスそのものが、本プロジェクトにおける重要な研究対象となっています。
スタイルパレット
Flow Machinesの技術的特徴の一つが、「スタイルパレット」と呼ばれる独自の概念です。
スタイルパレットは、音楽データを解析して構築されており、特定の音楽スタイルやジャンルを反映した素材の生成を可能にします。クリエイターは、自身が目指す楽曲の雰囲気や方向性に応じてスタイルパレットを選択することで、そのスタイルに沿ったメロディなどの提案を得ることができます。
Flow Machinesの主な取り組み
Flow Machines Professional
Flow Machines Professionalはデジタル・オーディオ・ワークステーション(DAW)上で機能するプラグインとして開発されたAIアシスト楽曲制作ツールです。クリエイターが日常的に使用している制作環境に組み込むことで、Flow Machinesの技術的アプローチを実際の制作フローの中で検証することを目的として設計されました。研究プロトタイプとして、ソニーグループ内における音楽制作の現場でも活用され、国内外で数多くの楽曲制作に用いられてきました。これらの実制作での利用を通じて、DAW環境におけるAIアシスト型制作のあり方や、人とAIが協調する創作プロセスについての検証が行われました。
Flow Machines Mobile
Flow Machines Mobileは、Flow Machinesの研究成果を、iPadおよびMac向けのアプリケーションとして展開した取り組みです。日本、欧州、北米において提供され、より幅広いユーザーがAIアシストによる音楽制作を体験できる形として設計されました。制作初期のアイデアスケッチや着想のためのツールとして活用されるとともに、音楽専門学校などの教育現場においても使用され、創作プロセスを学ぶための教材的な位置づけとしての活用も行われました。

※2026年3月18日 サービスを終了しました。ご利用ありがとうございました。
Sony Musicとの協働による取り組み
Flow Machinesは研究開発にとどまらず、実際の音楽制作および配信の現場においても活用されてきました。ソニー・ミュージックレーベルズが展開するLo-Fi Beatsチャンネル「Tokyo LosT Tracks -サクラチル- 」はそうした取り組みの代表例です。
同チャンネルでは、Flow Machinesを用いて制作された楽曲が数多く配信されており、その一例として、
「parkside in bloom」を制作したkensuke ushio氏が、制作過程やFlowMachinesとの関わりについてビデオの中で語っています。
GANStrument
GANStrumentは、既存のサウンドをもとに新しい音色を生成することを目的とした、実験的なサウンド生成技術です。楽曲そのものではなく音色やサウンドそのものを扱うことで、Flow Machines Mobileにおける音楽制作体験の広がりを探る取り組みとして位置づけられています。
研究成果の技術移管
Flow Machinesプロジェクトで蓄積された作曲支援技術のさらなる発展を目指し、2026年にその研究成果をローランド株式会社へ技術移管しました。
ローランドは電子楽器および音楽制作機器の開発を行う企業であり、同社の製品開発の知見と組み合わせることで、本技術を活用した新しい音楽制作ツールの展開が期待されています。ローランドからは、本技術を活用した音楽制作ツールに関する発表が予定されています。
本技術移管の詳細については、以下のお知らせをご参照ください。
お知らせ:ソニーコンピュータサイエンス研究所「Flow Machines」の研究成果をローランドへ移管
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