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ソニーコンピュータサイエンス研究所は開設以来、その一貫したテーマとして「オープンシステム(開放系)」を掲げています。オープンシステムとはクローズドシステム(閉鎖系)に対するものです。これまでの科学技術は問題の領域を定義し、切り取り、抽象化することによって問題を解いてきました。しかしながら、近年我々は定義しきれない問題、切り取ることができない問題を解かねばならない状況に至っています。その一般的な例としては社会、経済現象や生命の問題を挙げることができます。コンピュータシステムに関して言えば、インターネットのような巨大システムやヒューマンコンピュータインタラクションを挙げることができます。インターネットでは時々刻々ネットワークトポロジーや提供されるサービスが変わり、個々の要素システムについての十分な知識を持っていたとしても全体の振舞が予測できません。また、真に使いやすい利用者環境を提供するためには、利用者すなわち人間について良く知らなければなりません。ところが人間は、極めて多元的で、その行動は状況や時間に強く依存し、人間を還元論にのみ立脚して理解し、定義づけようとすることには無理があります。地球環境や持続可能な社会についても同様です。

このような大きな課題を解決するために、ソニーコンピュータサイエンス研究所は「解析」、「合成」に加えて時間的な変化に対する「運営(マネージメント)」の概念を加えた新しい科学の方法論を提唱し、これをオープンシステムサイエンスと名付けました。そしてこの考えの下に、サイエンス志向の研究者は実世界を計算するための手段としてコンピュータを最大限に利用し、問題を解決します。エンジニアリング志向の研究者はコンピュータやネットワークを実世界の一部に取り込み、安心して使えるようなシステムを構築します。このような相補的なアプローチを一体として行うことにより、相互に大きな刺激を与え合い、新たな研究領域や研究パラダイムを創生し、新技術を創出します。